１．おはよう！　元気？

朝だ、ゆっくりと目を開く。窓から空を見る。晴れだ。
顔を洗う。冷たい。

当たり前の今日が始まってほしい。カーテンを開ける。日光が射し込む。ここまでは特にどうということはない。これがなければろくでもないことがおきているはずだ。窓辺にはいくつものガラス瓶がある。クレソンが真っ白な毛根を水に伸ばしている。

おはよう。元気？　誰に？　カイミジンコに。そして安心する。不愉快なニュースを知る前の、そしてあわただしい一日の始まる前の一時の幸せ。これがこのところの私たちの朝の風景だ。ここまでの道のりは長かった。

彼女、いや彼女たちとの出会いは偶然だった。（＊いや、うっかりしていました。彼もおられましたね。失礼しました）もう５年以上前のこと。新型コロナの大流行するかなり前の幸せな頃だ。

鍋料理の季節だった。野菜の芹を買ってきた。使った残りを水栽培しようと思いついた、いつでも食べられるように。水道水を瓶に、茎を浸けて新しい葉の出るのを待っていた。