2.臍帯について

投稿日 : 2024.10.15


臍帯(へそのお)は分娩後に産婆が適切に処理するものですが、地方・都会にかかわらず雑に扱う人もいますので、一応一通り説明をしておきます。

臍帯は分娩後すぐに1寸(3cm)ほどの位置をよく消毒した(一度よく煮沸して殺菌した)細い麻の紐で固く結び、そこからさらに3センチほどのところを同じように処理した紐で固く縛ってから、中央部をよく消毒したサミで切り離します。

産湯の後に30倍に薄めた石炭酸水または百倍(リゾール)水で切り口を洗い、サルチルサン綿または殺菌した柔らかい布(防腐ガーゼ)でくるみ、左上に置いて包帯で丁寧に腹部に巻きます。(わが国ではふつうは消毒しない麻ひもでくくり五倍子粉をつけた紙に包む習慣があります)

この包帯は毎日取り換える必要があります。しかし、あまり固く巻くのは避けるべきです。赤ちゃんはいつも腹で呼吸しますので苦しくなるからです。ですから、この巻き方はなかなか難しいものです。

私は包帯を三筋ほど合わせて腹に二巻する長さに切って、外側の一筋の両端を二つに割き図のように巻くのが最も手軽だと思います。なお、着物の着せ替えや抱く時には気を付けなければなりません。

臍帯は数日後には自然に剥がれます。臍帯が取れると30倍の石炭酸水に浸した小さな脱脂綿で軽く洗い、さらにサリチル酸綿で拭って乾かし、15倍の硼酸軟膏を塗ってから包帯をします。

この包帯は毎日取り換え、臍が十分に落ち着くようにしなければなりません。

臍帯や臍帯離脱後はいろいろな病原菌が入りやすい危険な場所ですから、よく消毒をする必要があります。わが国では臍帯離脱後にもぐさを焼き灰にして塗る風習があります。この灰は焼いたものですから消毒されておればひどい害はないでしょうが、前に述べたようにこの部位は病毒が入りやすいところですから、消毒を忘れてはなりません。

ここで発生する病気は臍出血、丹毒静脈炎、破傷風、臍脱腸などです。

私は一度ある家に往診した際、赤ちゃんの着物や腹部が真っ赤になっていました。どうしたのかと尋ねますと、一日半ほど前からだと言われました。驚いてよく見ますと臍帯のくくりが悪くて臍帯から絶えず血が出ていて赤ちゃんは蒼白になり衰弱していました。そこでさっそく臍帯を縛りなおして手当てをした結果、ようやく命を救うことができました。

この状況は非常に危険なことで、もし私が来るのが遅れていれば助けられなかったと思います。この時は非常に驚きました。これは産婆のミスですが、付き添っている人の心得が足らなかったのも原因です