27.種痘

投稿日 : 2024.10.16


医療の進歩によって、昔は悲惨を極めた病気だった天然痘に罹ることが無くなったのは種痘の恩恵です。

これを発明した人はエドワルド・ジャンナーというイギリスの医者で、西暦1796~7年ごろのことです。

わが国には文政のころ初めて長崎に伝わりましたが、一般には普及せず、嘉永4年(1851年)にオランダの医者が邦人に教え、今日のように普及しました。

種痘とは、天然痘に罹った牛から人に移して、人が天然痘に罹らぬようにするもので、注意深く種痘を施せば天然痘が流行ることはありません。しかし、日本では時々発生する例があり、これは種痘をしなかったためで、これは困ったことです。そこで政府もいろいろな規則を設けて、必ず種痘をすることになっています。

最初の種痘は生後70日以上、6か月以内にしましょう。そのとき付かないからとして放置してはなりません。その場合はさらに6か月以内にもう一度接種し、それでもつかない時には毎年接種しましょう。

初回で付けばその後は3~4年をめどに接種しますが、毎年接種する人もいます。それもいいでしょう。もし天然痘が流行しそうなときには、年齢や種痘を済ませた人、一度天然痘に罹った人も必ず接種するのが安心です。以前に流行したときには、一度天然痘に罹って顔に痘痕が残っている人もまた罹ったことがあります。

種痘の種には3種類があります。まず一つは原痘漿といって、牛の疱瘡の漿液です。

二番目が、人化痘漿で、牛の痘漿を一度人間に接種してできた痘漿です。

そして三番目が帰種痘漿といって、人化痘漿をもう一度牛に接種して得た痘漿です。

原痘漿はほとんど使われませんが、近年よく行われたのは人化痘漿で、俗に種取といって、小児に接種して得た痘漿をほかの小児に接種するものです。これはとても感染力が強いのですが、困ったことに種を採った小児が梅毒やハンセン病などの病気を持っているときには、次の小児に移す危険があります。

そこで現在では帰種痘漿だけが用いられます。

種痘するときは、まず小児をよく湯で洗って清潔な衣服を着せましょう。また、医者には、接種する部位や器具を丁寧に消毒してもらいましょう。

接種は日本ではふつう左右の腕に3から5か所に施します。接種法は、刺種法と切種法がありますが、どの場合でも接種する人が上手であればいいわけです。

接種されると、3~4日するとその部位が赤くて小さな盛り上がりができ始め、少しずつ大きくなり、その上に水泡が出来て周辺が赤く腫れます。

8~9日後には化膿して、12日目ごろには硬くて黒い瘡蓋ができます。

さらに1週間ほど経てば瘡蓋は自然に剥がれます。発熱は6~7日目に少し出はじめ、8~9日目が最も高く、そのご平熱に戻ります。

種痘後の心得

1)接種部位や瘡蓋をこすったり搔むしったりしないように、抱いたり、背負ったりするときには注意しましょう。

2)衣服は清潔に、垢の付いたものを着せないように。

3)顔や手先をよく洗って、また風呂で湯に接種した部位をつけないように。

4)母親や接種した子は食べ物に注意して、消化の良いものを食べ、禁酒、油濃いものや刺激物は避けましょう。

5)水ぶくれが破れたり、高熱が出たり、または異常な発疹、別の病気の発症が出た場合には、必ずすぐに医師の診断を受けるように。

6)接種中に風邪などほかの病気にかからないように気をつけましょう。