29.小児と売薬、胎毒下剤、鍼灸について

投稿日 : 2024.10.16


小児、特に幼い子にはいろいろな売薬や胎毒下剤を飲ませたり、鍼灸術を施したりするのはとても良くないことです。

売薬は数えきれないほどあり、それぞれいろいろな物質でできているので、その仔細は知りませんが、丸薬を飲まして胃腸を損なう例はよく診ています。

小児の胃腸はとても弱いものです。だから、丸薬のような固いものは禁忌となっています。また、丸薬は何年前に製造したかわかりません。中には10年とか20年前に作られたものもあるでしょう。このような石のように硬いものは絶対避けるべきです。丸薬がそのまま便に出ることもあります。

一方散薬にも、とても注意が要ります。私は一度アンチフェブリン(*アセトアニリド:解熱鎮痛剤)を飲ませた新生児が全身紫色になっている中毒症を見たことがあります。

胎毒下剤は、小児の身体にある毒を出すための下剤としていろいろ売っています。これは日本では昔から一般に使われて来ました。胎毒と俗に呼ばれるものは、遺伝性梅毒、皮膚病、湿疹、腺病などとあります。

しかし、これらが下剤で取れるものであればいいのですが、そんなことでととれるものでは決してありません。かえって胃腸を損ない、粘液性の大便がでたりします。この粘液物で胎毒が取れたと錯覚して喜ぶ人も沢山います。

非常に弱い子はこのためにとても衰弱しまう例をよく見かけます。

私は、生後8日の赤ちゃんに赤い色をした胎毒下し薬の丸薬を飲ませて、急に胃腸を損ない、乳を全く飲まなくなって、非常は腹痛を訴えるように高く叫び、大便には粘液と共に赤い丸薬を出してついに死亡した例を見ました。

世間では健康と考えるべき子にも胎毒を下そうと下剤を飲まして胃腸を損なう例がよくあります。また、下剤と常用してやめたときにかえって秘結(*便秘)になるものです。

鍼灸も昔から小児に施すもので、目的は子供の夜泣きや不眠、泣き虫を抑えるなどとして、全身のところどころに鍼を刺すものです。

私は鍼灸については勉強したことはありませんが、そのような目的で鍼を施した結果、発熱したり下痢をしたりした子を何度も診ました。

また、鍼の最中に右の腿に腫れが起きて膿んでいるのに、それの散らすために毎日鍼を行ったり、肺炎の子に鍼をしたりして非常に衰弱して危うく死亡しそうになった例をみています。

これは鍼を施す人の腕にもよりますが、この術を施すに必要な人体や解剖などの国家試験も受けずして、小児がなぜ泣くのか、なぜ発熱しているのか、どんな病気にかかっているのかなどがわからない鍼灸師だったら、とても安心できないでしょう。

大人ならいざ知らず、小児に鍼灸は良くないと私は思っています。

お灸も自分は研究したことはありませんが、幼児にはよくありません。なぜなら、幼児はとても感じやすいですから、何かにつけて刺激的なことを施さないというのが原則だからです。

以上の4つのことについては、我々医者が十分注意する必要があるだけでなく、政府も一層の監督をしなければならないことです。