34.伝染病

投稿日 : 2024.10.16


伝染病はたくさんありますが、いずれも隔離や消毒、予防が必要です。

特に政府が厳重に監督しているものは9種類あります。赤痢、コレラ、腸チフス、ジフテリア、疱瘡、発疹チフス、猩紅熱、ペストです。どれも子供も罹りますが、ここでは小児にもっとも罹りやすい麻疹、ジフテリア、百日咳、赤痢について簡単に説明しましょう。

はしか

はしかは2歳から6歳以下の小児が最も多く罹る病気です。とても早く伝染します。衣服や器具からも移るのですが、一度罹ると2度と罹らない病気とされています。

この病気の最初は、風邪に似ていて咳が少し出たり、鼻水がでたり、鼻血がでたり、目が赤くなったりします。

3~4日すると、高熱になり顔や体に発疹が出て、咳も激しくなります。

さらに3~4日すると熱が下がり次第に発疹も消えて、経過が良ければ10日ぐらいで治ります。

しかし、この間に大抵気管支カタルを起こしますし、時にカタル性肺炎を起こすとかいろいろの合併症がでます。また、それだけでなく、病後は体力が消耗しているので、いろいろな病気を誘発します。

特に肺労がしばしば起きます。流行がひどくなければはしかに罹るのは悪いことではないのですが、大流行の時とか、虚弱な小児の場合にはなるべく罹らないようにしましょう。

病気中には医者にかかることが必要ですが、清潔で暖かな部屋を(華氏68~9度)にして静かに寝かせ、牛乳や肉汁など消化の良いものを与え、肺炎や合併症にならないように注意しましょう。

病後にはたとえ軽く済んでも十分滋養のあるものを与えて、体力が回復するようにする必要があります。

百日咳

百日咳も小児に咳で伝染する病気です。

ひどいときには一昼夜に40~50回も咳が出るもので、小児はとても苦しく、咳によって嘔吐、鼻血、脱腸、結膜出血などを起こします。

初期には普通の咳が出ますが、2~3週間たつと、この病気に特有の引き込むような咳が続きます。さらに4週間たてば普通の咳に戻って次第に治ります。

この病気ははしかと同じようにとても体力を消耗しますので、常に消化の良い食べ物を食べさせ、栄養を補給する必要があります。

合併症としては気管支炎、カタル性肺炎、脳病などですので、病気中に強い風に当てたり、雨の日に外出をしたりするのはよくありません。ただ、好天で暖かな日には外出をしても大丈夫です。

病後には慢性気管支炎や肺結核などがよく起こるので、十分注意して身体が回復するようにしましょう。

ジフテリア

この病気は、昔、馬痺風(のどぼうそ)と呼ばれました。この病気もよく小児に起きるもので、感染力が強いものです。

多くは、発熱、喉の痛みがあり、喉や扁桃腺が腫れて、白い膜ができます。しかし、時によると熱が出ないときもあり、小児がのどの痛みを訴えないときがあります。

現在はジフテリア注射液ができたので、大抵は治ります。しかし、注射するのが遅れると、効果がなく死亡することがよくあります。これは非常に注意すべきことで、小児に熱が出たり、喉が痛んだり、咳が出たりしたときには、必ず喉を検査しなければなりません。

病後には突然心臓麻痺を起こして死ぬ場合もありますから、治ったあとといっても栄養を補給して、声の変化やどこかが麻痺したときにはぐに医者に診てもらいましょう。

赤痢

この病気も激しい伝染病で、初期には熱が出て下痢をします。

続いて何度も下痢を繰り返し、やがて白い粘液とか血液が混じるようになります。

この病気は、コレラや腸チフスなどと同様に食べ物から感染するものですから、日頃の注意が重要で、食べ物はよく煮てら食べましょう。

すべての伝染病は肉眼では見えず、顕微鏡でしか見えないいろいろな黴菌が原因になる病で、赤痢やコレラ、腸チフスなどは飲食物から来ますので、ぜひ一度火を入れて殺菌してから食べましょう。

流行中には特に注意が要ります。また、患者の胃腸から出た排出物、便などは、濃い石炭酸水とか石灰液で殺菌することが必要です。

ジフテリア、発疹チフス、猩紅熱、疱瘡、ペストなど多くは空気、器、また直接接触によって伝染します。ですから、患者を隔離し、衣服や病室は厳重に消毒しなければなりません。

*筆者の付記

伝染病として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について考えておきたいと思います。

いろいろな統計によれば、現在主流となっているmRNAワクチンはパンデミックの抑制と重症化の防止に効果があったと評価されています。にもかかわらず、副作用の可能性や後遺症など様々な理由で、このタイプのワクチンの接種に対して懐疑的な意見もあります。また、最近流行している新しい変異株は子供に感染する率が高まっているとも聞きます。これはこれまでは子供の感染率は大人よりかなり低いとされてきたことと違って、親や関係者にとっては悩ましい問題です。

このようなワクチン接種に対する世間の状況を解析した、今年8月に発表された研究論文を参考のために紹介します。

これはAbdul Suleman とPaula Vicente による”COVID-19 vaccination reluctance across Europe: Lessons for the future“ Vaccine Volume 42, Issue 21, 30 August 2024, 126168”『欧州全域でのCOVID‑19ワクチン接種への消極的姿勢:将来への教訓』です。

この論文はGoogle SchalerでPDFファイルが誰でもダウンロードでき、インターネット翻訳サービスで全文一挙に和訳できます。

この論文は、ワクチン接種に対する一定の項目についてのアンケート調査をEU諸国で集め、国、年齢、性別、職業、教育レベルなど多面的な切り口から、ワクチンを積極的に受け入れる、躊躇する、拒否するというセグメントに属する人たちの傾向を統計的に分析したものです。

仔細は省略しますが、次の記述は興味深く思いました。筆者が特に注目した一部を和訳して紹介します。

『ワクチンに対する消極的な姿勢は、制度的な信頼とも関連している。国(4.3%)、地方自治体(3.5%)に対する信頼は「消極的」セグメントで最も低い。さらに、欧州連合(EU)も十分に信頼されていない(6.8%)、

制度的信頼は、国民に対する歴史的・政治的な扱いによって根付き、形成されるものであるため、受容、躊躇、拒否のスペクトラムに表れている可能性がある、

 「消極的」層の34%は、ワクチンがどのように開発、試験、認可されるかについての完全な透明性が、ワクチン接種を受ける上で役割を果たす可能性があると認識している、

云々とあり、

人々が耳を傾け、アドバイスを求める尊敬される人物にアプローチすることは、ワクチンへの信頼の構築にプラスの影響を与える可能性がある』

アンケートの結果として、医療関係者が当面の学術的な統計に基づいてワクチンを許容する割合が多いのは理解できます。しかし、「ワクチンを含めて一般に薬剤にはある一定の副作用があるのは当然である」との認識から、被害を受けた人たちを当然のように切り捨てるという、上から目線がある限り、ワクチンへの一般の理解は深まらないのではと感じます。残念ながら現在、専門家とか学識経験者と俗に呼ばれる人々の姿勢によって、彼らへの信頼が薄らいでいると思われますので、特にこの点が懸念されます。『育児の心得』の最初にある墨跡の意味「我が身を大切にするように、人を大切にせよ」の姿勢が試されています。

筆者の個人的な意見では、ワクチン接種の奨励とは別に、発症した人を治癒させる薬剤を高齢者中心ではなく、広い年齢層に安価に積極的に提供することが、医療としても社会的な損失を軽減するためにもはるかに有効ではないかと思います。また、ごく最近京都大学で開発されたという、変位するウイルスにも普遍的に効果のあるという「キラーT細胞」を応用した新しいアイデアの医薬品が早急に開発元の日本で使われるようになればと思いました。