後記

投稿日 : 2024.10.17


この拙文を締めくくるにあたり、元聖母病院小児科部長、故東恩納洋著『赤ちゃんから幼児まで:育て方のコツ24章』(主婦と生活社)の目次を参考として引用させていただきました。この育児書は『育児の心得』が出版されてから80年後の1980年(昭和55年)に発行されました。

1章 ほんとうはお母さん自身が育つことなんです
2章 小児科のある病院で産みなさい
3章 赤ちゃんは大人のミニチュアではない
4章 母乳を飲ませよう
5章 母乳が出なかったら
6章 離乳はあせらず、手をかけすぎず
7章 体重の大小は気にしない、増え方が問題
8章 鍛えて育てる
9章 おじいさんおばあさんの出番
10章 入浴は我が家の流儀で
11章 触れ合いを大切に
12章 育児用品は成長とともに
13章 事故防止は細心に、しかし臆病にならずに
14章 発達は個人差が大きい
15章 環境に負けずに
16章 文化的な暮らしはほどほどに
17章 子供を通じて近所付き合い
18章 昔の子育てから学ぶ
19章 病気については最小限の知識で十分
20章 親の都合より子供の都合
21章 おなかがすくのを待とう
22章 育ちのよさとは
23章 耐乏生活のすすめ
24章 ルールを守るしつけ

この目次を振り返ると、育児の本質は時代を越えてほとんど変わらないことが再認識されます。

現在、日本では所得格差や地域格差が拡大し、所得状況や労働環境の影響で出生率が低下し続けています。こうした中で、小児科医を目指す医師の数が減少しているという現状も耳にします。加えて、医療経営の課題も影響しているようです。しかし、このような状況こそが、小児医療に関わる人々の活躍の時であり、その重要性が再認識されると筆者は考えています。

さて、人間は成長期を過ぎると肉体的に弱くなり、個人差がさらに顕著になります。したがって、高齢者の医療は幼児の医療と共通する部分が多く、育児書が今後も有用であることは間違いないと言えます。

さらに、80年後、すなわち2060年には、今とは異なる医療の風景が広がっていることでしょう。その時、小児医療に従事する人々は、AIが判断する診断結果を単に伝える役割にとどまるのでしょうか。それとも、個人差が大きく日々変化する小児やその親に寄り添い、AIを超える創造的な医療活動を担うのでしょうか。その未来がどうなるのか、とても興味深い問題です。2060年には、どのような育児書が出版されているのでしょうか。