2.臍帯について

投稿日 : 2025.03.03


臍帯(へそのお)は分娩後、産婆が適切に処理すべきものですが、地方や都会を問わず、雑に扱う人も見受けられます。そのため、一通りの処理方法について説明しておきます。

分娩後、臍帯はすぐに1寸(約3cm)の位置をよく消毒した細い麻ひもで固く結びます。この麻ひもは一度よく煮沸して殺菌しておくことが大切です。次に、その3cmほど下の位置を同様に処理したひもで固く縛り、中央部分を消毒したハサミで切り離します。

産湯の後、切り口には30倍に薄めた石炭酸水または百倍に薄めたリゾール水で洗浄します。その後、サルチル酸綿や殺菌した柔らかい布(防腐ガーゼ)でくるみ、左上に包帯で丁寧に巻きます。日本では一般的に消毒しない麻ひもで縛り、五倍子粉をつけた紙に包む習慣もあります。

この包帯は毎日交換する必要がありますが、巻きすぎには注意が必要です。赤ちゃんは腹部で呼吸しているため、あまり固く巻くと呼吸が苦しくなる恐れがあります。このため、包帯の巻き方は慎重に行うべきです。

私は、包帯を三筋ほど合わせ、腹部に二巻きできる長さに切ったものを使い、外側の一筋の両端を二つに割いて、図のように巻く方法が最も手軽であると考えています。着物の着せ替えや抱っこの際には注意が必要です。

臍帯は数日後に自然に剥がれます。臍帯が取れたら、30倍に薄めた石炭酸水に浸した小さな脱脂綿で軽く洗浄し、その後サリチル酸綿で拭き取って乾かし、15倍に薄めた硼酸軟膏を塗り、包帯をします。この包帯も毎日交換し、臍がしっかりと治るようにケアします。

臍帯や臍帯が離脱した後の部位は、さまざまな病原菌が入りやすく、非常に危険な場所です。そのため、十分な消毒が求められます。日本では、臍帯が取れた後に、もぐさを焼いてその灰を塗る習慣があります。この灰は焼かれているため、消毒されていれば大きな害はないと考えられますが、前述のように感染しやすい部位であるため、消毒を忘れないことが重要です。

ここで発生する病気としては、臍出血、丹毒、静脈炎、破傷風、臍脱腸などがあります。

ある日、赤ちゃんの家庭を往診した際、赤ちゃんの着物や腹部が真っ赤になっているのを見つけました。尋ねると、一日半ほど前からその状態だったとのこと。驚いて確認すると、臍帯の縛りが不十分で、臍帯から絶えず血が出ており、赤ちゃんは蒼白で衰弱していました。すぐに臍帯を縛り直して処置した結果、命を救うことができました。

これは非常に危険な状況で、もし私が遅れていたら助けられなかったと思います。この事例は産婆のミスでしたが、付き添っていた人々の認識不足も一因であったことが言えます。

ChatGPT:

この内容について、現代の医学的見地からコメントいたします。

臍帯処理に関する部分
現代の医療では、臍帯の処理は産婦人科医や助産師が行い、通常は適切な器具と方法で衛生的に行われます。以下のポイントが改善されています。

麻ひもでの縛りと消毒方法: 現代では、麻ひもや金属の針金などではなく、専用のヘアークリップや圧着剤を使用することが多く、縛り方も専用の医療器具を使用することが一般的です。麻ひもを使用して消毒後に縛るという方法は、感染のリスクが高い可能性があります。

消毒方法: 現代の医学では、臍帯や臍部の消毒には、石炭酸やリゾール水を使うことは避けられています。これらは皮膚や粘膜に対する刺激が強く、今ではアルコールやベタイン系の消毒薬、または生理食塩水などのほうが推奨されています。石炭酸やリゾール水は皮膚に過剰な刺激を与えるため、使用が避けられています。

臍部の包帯処理
包帯の巻き方: 産後の臍部の包帯には注意が必要です。包帯を巻くこと自体は、傷口の保護や感染予防に役立ちますが、巻きすぎには注意が必要です。過度に巻きすぎると、呼吸が妨げられたり、血流が制限される危険性があります。現在では、包帯を巻く代わりに、抗菌ガーゼなどを使用することが多く、より衛生的で通気性の良い方法が推奨されています。

臍帯の剥離とその後のケア

臍帯の自然脱落後の処置: 現代では、臍帯が自然に剥がれ落ちるのを待つことが一般的です。その後、臍部がきれいに乾燥するようにし、あまり強い消毒薬を使わず、適切なケアが行われます。過度な消毒や薬品の使用は、かえって感染リスクを高める可能性があります。

もぐさ(艾)の使用: もぐさを使うこと自体は、現代の医療では行われていません。もぐさの灰は、消毒が適切に行われている場合に限り、害は少ないとされていますが、今では医療現場では消毒のために適切な抗菌薬や清潔なガーゼを使用します。

臍帯に関するリスクと合併症
臍帯や臍部に関して発生しうるリスク(臍出血、丹毒、静脈炎、破傷風、臍脱腸など)については、現代医療ではこれらのリスクに対してきちんとした予防措置が取られています。特に破傷風は、適切な免疫接種によって予防されています。また、臍部の感染が起こった場合、現代では抗生物質などを用いて迅速に治療が行われます。

実際の症例(臍帯の縛り不十分による出血)
臍帯処置の不十分さによる血液の出血や蒼白症状に関して、これは現代ではあまり見られない事例です。臍帯を適切に処理しないと、大きな問題を引き起こすことがあり、医療現場でも慎重に管理されています。このような症例は、現代の医療ではほとんど見られませんが、もし発生すれば、すぐに適切な処置を施します。

まとめ
この時代の育児書は、現在の医学的な知識や技術に比べると、いくつかの方法が不完全であることが分かります。特に消毒方法や縛り方、包帯の使用に関しては、現代ではもっと衛生的で安全な方法が推奨されています。現代医学では、赤ちゃんの健康を守るために、より厳密な感染管理と適切なケアが行われています。それでも、当時の医師や産婆が持っていた知識や経験は貴重で、今日の医療がどのように進化してきたかを知るうえで重要な資料となっています。

筆者との問答は次のページにあります。

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