15.母乳の与え方
投稿日 : 2025.03.04
母親は分娩後しばらく休息を取ります。新生児は産湯が済んだ後、眠ります。
その後、初めて目を覚ましたときは、産後おおよそ7~8時間経過していることになりますので、そのタイミングで授乳しましょう。
日本では産後3日目に初めて乳を飲ませる習慣があるようですが、それまでは前述したように、まくりや五香(センブリ)をたくさん飲ませることがありますが、これは良くないことです。
産後2~3日間は乳房が十分に張らず、分泌量も少ないものです。特に初産の場合、乳児は2~3日間はよく寝ることが多いため、母乳を1~2滴口に垂らせば、何も飲ませなくても問題はありません。
いろいろなものを与えて満腹にさせるよりも、空腹のままにしておくほうが、母乳をよく吸い出すことができます。
前述の通り、生後2~3日間は新生児の飲む量が非常に少ないため、乳の吸い方が少ないからといって他の飲み物を与えるのは良くありません。かえって、母乳の分泌が悪化するだけでなく、子どもの発育にも支障をきたすことがあります。特に初乳には下剤の働きがあり、胎便を排出させる効能がありますので、できるだけ母乳を与えることが大切です。
授乳時は、右と左の乳房を交互に使いましょう。また、乳房は授乳のたびに、一度煮沸した後、温かくした清潔な湯に浸した布で洗いましょう。これは非常に重要なことです。
特に注意しておくべき点として、よく見受けられることですが、母親や乳母が授乳の際に、不潔な指先に唾をつけて乳頭を濡らすことは非常に危険です。このような不注意が原因で、小児の口やのど、胃腸に病気を引き起こすことがあります。特に産後に悪露が指先についている場合は、非常に危険です。そのため、授乳を行う際は、必ず手を清潔に保つことが大切です。
授乳の回数は、最初の1週間は3時間おき、夜は4時間おきに設定し、その後は昼間は2時間半、夜は3時間おきにしましょう。しかし、虚弱な子どもの場合は、少し間隔を短くしても構いません。
授乳のタイミングが決まった子どもは、通常、非常に健康的です。授乳の時間は、子ども自身が決めます。満腹になると、乳房を自分で離します。
母乳は、小児の胃の中で約1時間45分ほどで消化され、腸へと送られます。そのため、2時間以内に次の授乳を行わないようにしましょう。
子どもが泣いたからといってすぐに母乳を与えるのは避けましょう。泣く原因に注意を払い、状況に応じた対応をすることが大切です。
ChatGPT:
この内容は、明治時代の時点での育児の常識や考え方を反映しています。現代の医学的見地から見ると、いくつかの点で改善や見直しが必要です。以下に現代の医学的見解をコメントとして述べます。
1. 新生児の授乳タイミングについて
「産後7~8時間後に授乳」とありますが、現代のガイドラインでは新生児が生後数時間以内、特に最初の1時間内に授乳を開始することが推奨されています。これは、初乳(colostrum)が非常に重要で、免疫物質や栄養素が豊富に含まれているためです。また、早期の授乳は母乳の分泌を促進し、赤ちゃんとの絆を深めるためにも重要です。
2. 産後3日目の授乳開始
「日本では産後3日目に初めて乳を飲ませる習慣がある」とありますが、これは過去の慣習であり、現在では最初から母乳を与えることが重要とされています。母乳は赤ちゃんの免疫力を高めるため、産後すぐに授乳することが推奨されています。
3. 乳児に対して他の飲み物を与えることについて
「他の飲み物を与えるのは良くない」との記述は現代の考え方にも合っています。初乳には免疫物質が豊富に含まれており、赤ちゃんにとって非常に重要です。また、他の飲み物を与えることは母乳の分泌を減少させ、母乳育児の成功に悪影響を与えることがあります。新生児は母乳だけで十分に栄養を摂取できます。
4. 授乳時の衛生管理
「授乳時には乳房を清潔に保つために煮沸した布で洗う」とありますが、現代では、乳房を洗いすぎることは逆に肌を乾燥させることがあり、過剰な清潔管理は推奨されません。むしろ、授乳前に手をしっかり洗い、乳頭周りは必要以上に洗浄しないことが推奨されます。過度に清潔を保とうとすることで、皮膚の自然なバリア機能を損なう可能性があります。
5. 授乳の頻度と間隔
「最初の1週間は3時間おき、夜は4時間おき」とありますが、現代では授乳の間隔は赤ちゃんの要求に基づいて柔軟に調整するのが一般的です。新生児はしばしば頻繁に授乳を必要とするため、必ずしも3時間おきに授乳を厳守する必要はありません。赤ちゃんが欲しがるタイミングで授乳することが大切です。また、虚弱な赤ちゃんには、授乳の間隔を調整する柔軟性が重要です。
6. 泣いている赤ちゃんへの対応
「泣いたからすぐに母乳を与えるのは避けましょう」とありますが、泣く理由にはさまざまな原因が考えられます。現代の育児では、赤ちゃんが泣いた理由を観察し、授乳以外にもおむつの交換や抱っこ、温かさなど、さまざまな対応をすることが推奨されています。赤ちゃんが泣くことは、必ずしも空腹を示しているわけではありません。
7. 母乳の消化時間について
「母乳は1時間45分で消化される」という記述について、母乳は通常、胃に入ってからおよそ90分から2時間で消化されるとされていますが、赤ちゃんの個々の消化能力や体調によっても異なる場合があります。時間に厳密な制限を設けることは不必要であり、赤ちゃんの様子を見ながら柔軟に授乳を調整することが大切です。
この育児書のアドバイスには、当時の医学や文化に基づいた有益な要素もありますが、現代の育児ガイドラインや科学的知見に照らしてみると、いくつかの点で修正が必要です。特に、授乳のタイミングや母乳の重要性、赤ちゃんの要求に応じた柔軟な対応が現代の医学では重視されています。
出産時に母親の経験する危険や大変な苦痛について、筆者との問答は次にあります。
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