19.生母の乳母に対する努め

投稿日 : 2025.03.05


生母は何よりもまず乳母を愛し、十分に管理しなければなりません。とはいえ、決して感情的になり、腹を立ててはいけません。乳母は、教育の機会が十分でないことが多いため、身体の清潔を保つ方法や小児の扱い方について、丁寧に教えてあげることが大切です。

決して叱ってはいけませんが、過度に大切にしすぎることも避けるべきです。

乳は精神的な起伏や食物の変化に敏感に反応します。そのため、乳母を雇った初めのうちはあまり厳しく管理せず、優しく接し、家風に馴染むまで特に注意を払うべきです。また、食事についても、乳母が普段食べ慣れているものを基盤に、少し変化を加えて、味噌汁や魚などを取り入れるようにしましょう。急にご馳走を与えたり、口に合わないものを無理に食べさせたりするのは避けるべきです。この点は特に慎重を期す必要があります。

乳母の養生は、生母のそれと同様に大切です。十分に運動するように注意し、おしめの洗濯や家事も手伝ってもらいましょう。

ここに一つの話があります。ある家が乳母を雇った際、その乳母は非常に良い人で、乳もよく出ていました。しかし、次第に乳の出が悪くなったため、原因を調べたところ、食事などには特に不足はなかったものの、この乳母は田舎から出てきた人で、もともとは非常に働き者でした。しかし、この家に来てからは運動量が減り、その結果として乳の出が悪くなったことが分かりました。

そこで生母は、乳母に多く働いてもらうために、夫の勤務する遠くの役所に弁当を届けてもらうことにしました。その結果、乳の出が元通り良くなったのです。

ところが、その後、子供が病気になり、乳母も同じ部屋で閉じこもることになりました。そのため再び乳の出が悪くなりました。しかし、子供が回復し、元の生活に戻ると、乳の出は再び良くなったのです。つまり、運動が非常に重要であることがわかります。

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ここには、乳母の健康や精神状態、そして食事や生活習慣の重要性についての考え方が記されていますが、現代の医学的見地からもいくつかの点で注目する価値があります。

1. 乳母の精神的・身体的健康管理
明治時代の記述では、乳母の精神的な安定や健康が乳の出に影響を与えるとされています。現代医学でも、母乳分泌は精神的・身体的健康に大きく関わることが確認されています。ストレスや不安、過度の疲労が母乳の分泌に悪影響を与えることが知られており、乳母が精神的に安定し、肉体的にも健康であることが重要です。この点に関しては現代医学でも一致しており、適切な休養、リラクゼーション、サポートが推奨されます。

2. 食事と乳の分泌

乳母の食事に関する記述もあります。現代の医学でも、乳母の食事は母乳の質に影響を与えると考えられています。特に、バランスの取れた食事が母乳に必要な栄養素を供給するために重要です。味噌汁や魚といった、乳母が食べ慣れた食材を使用することは、身体に負担をかけず、乳の分泌を促進するためには理にかなっています。急激な食事の変化を避ける点も、消化や体調に悪影響を与えないよう配慮する観点から、現代でも理解されている考え方です。

3. 運動と乳の分泌

乳母の運動に関する記述もあります。現代医学でも、適度な運動は健康を保つために重要であり、運動不足が母乳分泌に悪影響を与える可能性があることが示唆されています。身体を動かすことは、血行を促進し、乳腺の健康を保つために良いとされています。特に、仕事の環境や日常的な活動が運動量に影響を与える点について、乳の出に直接的に関係があるという理解も現代医学で支持されています。

4. ストレスと乳の分泌

「乳母が同じ部屋で閉じこもったことが乳の出に影響を与えた」という記述は、現代でも理解されています。ストレスや生活環境の変化は、ホルモンバランスに影響を与え、母乳の分泌に影響を与える可能性があるからです。母親や乳母が快適で安定した環境で過ごすことが、母乳育児においても非常に重要だとされています。

まとめ

明治時代の育児書に書かれた内容は、当時の生活環境や知識に基づいていますが、多くの部分で現代の医学的見解と一致しています。乳母の健康、精神的な安定、適度な運動、そして食事の重要性は、現代の母乳育児でも強調されている要素であり、当時からの知見が今でも有効であることがわかります。