27.種痘

投稿日 : 2025.03.05


医療の進歩により、かつては非常に深刻だった天然痘にかかることがなくなったのは、種痘の恩恵によるものです。

この技術を発明したのは、イギリスの医師エドワード・ジェンナーで、西暦1796~1797年ごろのことです。

日本には、文政のころに初めて長崎に伝わりましたが、一般には普及せず、嘉永4年(1851年)にオランダの医師が日本人に教え、その後、普及が進みました。

種痘とは、天然痘にかかった牛からその病気を人に移し、天然痘にかからないようにする方法です。注意深く種痘を行えば、天然痘が流行することはありません。しかし、日本では時折発生することがあり、これは種痘を受けなかったことが原因です。これを防ぐために、政府はさまざまな規則を定め、必ず種痘を受けるようになっています。

最初の種痘は、生後70日以上、6か月以内に行いましょう。接種しても効果がなかった場合は、放置せず、6か月以内にもう一度接種し、それでも効果がなければ、毎年接種を続けることが勧められます。

初回で効果があった場合、その後は3~4年を目安に接種を行いますが、毎年接種する人もいます。これも一つの方法です。もし天然痘が流行しそうな場合、年齢に関係なく、種痘を受けた人や一度天然痘にかかった人も、必ず接種を受けることが安心です。過去に流行した際には、一度天然痘にかかって顔に痘痕が残った人でも、再度かかることがありました。

種痘には3種類の種が存在します。まず一つ目は、原痘漿(げんとうしょう)で、牛の疱瘡から得た漿液です。

二つ目は、人化痘漿(じんかとうしょう)で、牛の痘漿を人に接種して得た痘漿です。

三つ目は、帰種痘漿(きしゅとうしょう)で、人化痘漿を再度牛に接種して得た痘漿です。

原痘漿はほとんど使用されておらず、近年では人化痘漿が多く使われてきました。俗に「種取(たねとり)」と呼ばれる方法で、小児に接種して得た痘漿を他の小児に接種するものです。これは非常に感染力が強いですが、問題なのは、種を取った小児が梅毒やハンセン病などの病気を持っている場合、次の小児に病気を移す危険性があることです。

そのため、現在では帰種痘漿のみが使用されています。

種痘を行う際は、まず小児をよく湯で洗い、清潔な衣服を着せましょう。また、医師には接種部位や器具を丁寧に消毒してもらう必要があります。

日本では、通常、左右の腕に3~5か所の接種を行います。接種法には、刺種法(ししゅほう)と切種法(せっしゅほう)がありますが、どちらの場合でも接種者が熟練していることが重要です。

接種後、3~4日で接種部位が赤くなり、小さな盛り上がりが現れ、次第に大きくなり、水泡ができて周辺が赤く腫れます。

8~9日後には化膿し、12日目ごろには硬くて黒い瘡蓋(かさぶた)ができます。

その後、1週間ほどで瘡蓋は自然に剥がれます。発熱は6~7日目に少し現れ、8~9日目が最も高く、その後、平熱に戻ります。

種痘後の心得

  1. 接種部位や瘡蓋をこすったり、掻いたりしないように注意しましょう。また、抱いたり背負ったりするときには気をつけましょう。

  2. 衣服は清潔にし、汚れたものは着せないようにしましょう。

  3. 顔や手をよく洗い、接種部位が湯に触れないように、風呂に入る際は注意しましょう。

  4. 母親や接種した子供は、消化の良い食べ物を摂り、禁酒し、油っこい食べ物や刺激物を避けるようにしましょう。

  5. 水ぶくれが破れたり、高熱が出たり、異常な発疹や他の病気が現れた場合は、すぐに医師に相談しましょう。

  6. 接種期間中に風邪など他の病気にかからないように気をつけましょう。

ChatGPT:

この内容は、18世紀末から19世紀にかけての種痘に関するもので、当時の医学的知見に基づいています。現代の医学的見地からコメントすると、いくつかの点で進化を遂げた部分もありますが、当時の情報が非常に重要であったこともわかります。

1. 天然痘と種痘
天然痘は、世界的に見ても非常に致命的な感染症であり、種痘はその予防のために極めて重要な技術でした。エドワード・ジェンナーの発見(1796年)は、後のワクチンの基礎となり、最終的には天然痘の撲滅につながりました。現代においては、天然痘は既に根絶されており、WHOの主導で1979年に世界中で天然痘が撲滅されたことが確認されています。

2. 種痘の方法
当時の種痘は牛痘を人間に接種するという方法でしたが、現在ではワクチンがもっと精密に製造され、牛痘を使用することはなくなっています。現代のワクチンは、非常に高い精度で人工的に作られたウイルスの不活化(または弱毒化)物質を使用しており、安全性も大きく向上しています。また、種痘に関する「感染力が強い」とされる部分について、現在ではワクチンの品質管理が非常に厳格で、感染症のリスクはほとんどありません。

3. 接種方法と注意事項
接種後に見られる症状(赤く腫れる、水疱、瘡蓋など)は、現代のワクチンでも見られる副反応に似ており、一般的に接種後に何らかの局所的な反応が現れます。接種部位を触らないようにすること、清潔を保つことは、現代のワクチン接種後にも推奨されており、衛生管理が重要です。しかし、現代では、接種後の症状が過度に重篤になることはほとんどなく、軽度なものにとどまることが一般的です。

4. ワクチンの安全性と副作用
現代ではワクチン接種後の重篤な副作用は非常に稀です。過去には、接種に伴う感染症のリスクや不完全な接種が問題となっていたこともありますが、現在のワクチン技術では、そのようなリスクは大幅に低減しています。とはいえ、ワクチンに対するアレルギー反応などの異常反応がまれに発生することがあるため、接種後に異常を感じた場合は速やかに医師に相談することが推奨されています。

5. 時代背景
江戸時代や明治時代の種痘に関する記述は、当時の医療技術の限界と、その進歩を実感させるものです。天然痘を予防するために多くの努力がなされ、医師や政府が果たした役割も大きかったことがわかります。

まとめ
この育児書に書かれた内容は、当時の種痘に関する医学的理解を反映しており、天然痘撲滅に向けた大きな一歩であったことは間違いありません。しかし、現代では科学技術の進歩により、ワクチンはより安全で効果的な方法に進化しています。ワクチン接種の普及と品質向上により、現代においては天然痘はもはや存在しないことから、その重要性は歴史的なものとなっています。