41.精神とその養生

投稿日 : 2025.03.06


小児の精神作用は、最初のうちは特別な観念を持つものではなく、ただ五感が受け取る外部の刺激を感じるだけです。

言い換えれば、幼児の頭脳には思考や感情の作用はなく、ただ「熱い」「冷たい」「空腹」といった感覚を感じるにすぎません。したがって、心を育てることはすなわち五感を育てることに他なりません。

心を養うためには、父母や教師の協力が必要ですが、まず新生児の時期から愛情を持って昼夜問わず育てるのは、何と言っても母親です。母親は、幼児の五感が順次発育しているかに注意を払い、少しずつ教えていくことによって小児の心を築いていきます。

その母親の育てた心の基盤の上に、父親や教師が学問や礼儀を教えることにより、幼児は立派な人に成長するのです。したがって、母親は非常に重要な役割を担っています。しかし、もし母親の育て方が不適切であれば、父親や教師がいくら良い種をまいても良い実は結実しません。

孟子の母親が子のために家を三度移し、また織物を途中でやめて子を戒めた話(*孟子の母は子どもの教育に非常に厳しく、住居を三度移したり、学問をおろそかにすることを許さなかったという話)は、母親の深い愛情を示すものです。また、楠正行の母親が彼を戒め、成人して仇を討つように諭した話(*楠正行の母親が彼の自決を止め、成人して仇を討つように励ました話)も、母親の偉大さを感じさせます。こうした母親の努力によって、孟子や正行が生まれたのは必然的なことです。

西洋でも母親による教育は進んでおり、母親によって優れた人物が育った例は非常に多いです。昔も今も、優れた人物は優れた母に感化されていることが多く、母親の影響力は非常に大きいのです。

乳児は常に母親の胸元にいて、母親の顔を見つめ続けます。言葉を覚えようとするときには、母親の唇の動きを凝視します。また、少し物事がわかるようになると、母親に対して様々な問いを発します。この時、母親は十分に注意を払い、良いことと悪いこと、物事の善悪を丁寧に教える必要があります。

とはいえ、過度に甘やかしてわがままに育ててはいけません。また、決して子供を叩いてはいけません。子供に嘘をついたり、良くないことをしたりすると、母親を疑い、良いことを教えても受け入れなくなります。

小児の心は、胃腸と同様にまだ完全に形成されていないため、最初から難しいことを教えても理解できません。ですから、少しずつ教えることが重要です。

おもちゃや絵本は、子供の知識を育てるために重要であり、おもちゃは単なる遊び道具にとどまるべきではありません。色や形、動物や植物の形をしたもの、絵などを与えて、名前や性質を丁寧に教えましょう。尖ったものや刃物は持たせてはいけません。また、有害な塗料を使用したおもちゃや、飲み込む可能性のある小さなものも避けるべきです。

小児に話を聴かせることは重要で、特に徳育には大きな役割があります。簡単で正しい言葉を使い、面白くて忠孝、仁義、礼、智、信といった徳を含んだ話を聴かせることが非常に大切です。

3~4歳になれば幼稚園に通わせるのも良いですが、その選び方が重要です。なぜなら、保母が適切でなかったり、高度すぎる教育を行ったりすると、かえって悪影響を与えるからです。

小児の脳は、6~7歳になるまで整わないため、それ以前に簡単なことでも勉強をさせてはいけません。早期に勉強を始めても、初めはよく覚えることがあっても、後になって優れた人物にはならないことが多いです。

小児は6~7歳になって初めて自分の体をうまく制御できるようになります。日本では6歳で入学することが決まっていますが、多くの親が子供の年齢を隠して早めに入学させ、年齢に関係なく「何年生だ」と自慢することがありますが、これは非常に問題です。

ある学者は、7歳に達する前には絶対に勉強をさせてはならないと説いています。なぜなら、5~6歳の頃は、考える力をつかさどる脳の重要な部分が最も成長する時期だからです。この時期には十分に保護すべきです。

学校に入学する時、すべての子供が入れて良いわけではありません。子供の身体の発育に応じて、年齢に合わない場合は、1~2年の延期が必要です。

また、軽い脳障害がある場合、親は事前に気づかないことが多いため、他の子と同様に勉強を始めると、勉強が進まないばかりか、子供に心身の負担をかけることになります。このような場合、1~2年の延期が必要です。

小児を学校に入れた後、親は放置してはいけません。母親はその子供の身体の様子を注意深く観察し、学校での勉強と家庭での愛情をもって教育してください。男子はできるだけ活発に、女子はできるだけおとなしく育てるべきだとされますが(*これは時代を反映した考えであり、今は男女問わず元気に育てることが重視されています)。

現代の小学校のカリキュラムは、人数も多く、教える内容も盛りだくさんで、児童にとっては非常にハードです。ですから、学校から帰った後に習い事をするのは必ずしも良いことではありません。

子供にとって最も重要なのは、身体を丈夫にし、徳を育てることです。この二つが備わらないと、知育もできません。

人はどんなに知識があっても、身体が弱ければ役に立ちません。特に最近では軽薄で不徳義な大人が多いようで、子供たちもそれを見習うことがあるため、非常に注意が必要です。

不幸にも身体に障害を持つ小児には、5~7歳になった時点で、施設に入れることを考慮しましょう。しっかりと成長しますので、悲しまず養育を怠らないようにしましょう。

ChatGPT:

これには、当時の教育や育児に対する価値観が色濃く反映されていますが、現代の医学的見地から見ていくつかのポイントで異なる考え方が必要です。以下にいくつかのコメントを挙げます。

「小児の精神作用は五感を通じて発達する」という考えについて
明治時代の育児書では、幼児の心の発達は五感を通じて行われると述べられていますが、現代の心理学や神経科学では、幼児期の発達は感覚刺激だけでなく、情緒的な経験や社会的相互作用も重要な要素であることが確認されています。特に、愛情や母親との絆(アタッチメント)は、脳の発達において重要な役割を果たします。

「心を育てるためには母親の愛情が不可欠」という点
母親の愛情が非常に重要であるとされている点には共感できますが、現代の研究では、育児において父親やその他の家族、保育士、教師の役割も非常に重要であることが強調されています。共育(共同で育てること)の重要性も認識されており、父親や他の家族メンバーによる関与が、子どもの社会的発達や感情調整に良い影響を与えることがわかっています。

「過度に甘やかしてはいけない」「子供を叩いてはいけない」という点
現代の育児でも、過度な甘やかしは問題とされますが、叩くことについては絶対的に避けるべきとされています。暴力的な手段は、子どもの情緒的発達に深刻な悪影響を及ぼすことが明らかになっており、現代の育児ではポジティブな強化や非暴力的な方法が推奨されています。

「早期の教育は控えるべき」という主張
現代の発達心理学では、幼児期における遊びを通じた学びの重要性が広く認識されています。確かに過度に知識を詰め込むことは推奨されませんが、適切な年齢に応じた学びの経験(例えば、創造的な遊びや社交的な活動)は、脳の発達にとって非常に有益です。無理に早期学習を強いることが問題視されることもありますが、遊びや社会的な活動を通じた学習は、自然な発達に寄与します。

「男女で育て方が異なるべき」という点
現代では、性別に基づく育児の差別は避けるべきだとされています。男女ともに身体的にも精神的にも、同じように自由に成長し、育つべきだという立場が広まっています。個々の子どもに対する理解と支援が重要であり、性別による制限を設けるべきではありません。

「子どもを早く学校に入れることの弊害」
現代の教育研究では、学齢期前の早期教育について慎重なアプローチが求められています。過度に学問を重視することは、子どもに過度なストレスやプレッシャーを与える可能性があるため、バランスが重要です。遊びや自己表現の時間を確保することが、健全な発達を支えるために必要だとされています。

「障害を持つ子どもについて」
障害を持つ子どもへの対応については、現代では早期介入とインクルーシブ教育が推奨されています。障害を持つ子どもたちは、適切な支援を受けることで、その潜在能力を最大限に引き出すことができることが科学的に証明されています。また、障害のある子どもが育成施設に入るという考え方は、現代の理解には合いません。家庭や地域社会、学校での包括的な支援が重要です。

まとめ
この育児書のアプローチは当時の社会的背景を反映しており、多くの点で現代の育児理論とは異なります。特に、親の役割や教育方法に関する考え方、男女別の育て方に関する部分は、現代では進化した視点が求められています。現代の育児は、子ども個々の発達に基づき、科学的根拠を重視したアプローチが大切だとされています。

親の子に対する禁句についての問答は次のページにあります。

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