13.放射線効果の本質

投稿日 : 2009.09.03


『血球計算より放射線学へ:物理学を学んだ医師の実験と随想』 松枝 張 より

この点について生物学領域は解明困難な問題が山積しているが測定のparameterの件である程度進展するものと思う。例えば分子単位ではなくもっと大きないわゆる新陳代謝の如き過程において何らかの永続的変化が起っている事が推定出来る。

著者は以上の問題について甚だ大胆な仮説を抱いている。情報誤伝と言う観点からこの問題を取り上げてみてはどうであろうか。この考えからすると生物が放射線のために特別な外面上の所見もなく死亡するのが分かるような気がする。この意味ではDNAに劣らずRNAは重要であろう。機能上の衰退ではない事は放射線によって酸素系の活性度がむしろ高まる事からも証明できる。それだとするとこれは制御を失った状態或は情報誤伝と考えるの至当であろう。従って放射線傷害を病理その他の形態的なものに求めるよりも機能的なものに主眼をおくべしだろう。

情報誤伝のたとえ話は次のようなものが適当と思う。霧に迷った山頂において間違った谷間に降りた旅人が死に、何もしないで山頂で夜を明かした人が生き延びた例に似ている。むしろ情報のない方がよいのであって誤伝の方が傷害が大きくなる。

生物コンパスという点から眺めても放射線や無重力状態はその均衡を破るものであり発病の可能性を秘めているものと思われる。

(*今、この節を改めて読んだ時、氏がRNAの重要性について触れておられることが印象的に思えた。ウイルスがRNAだけを持っていて、細胞に取り込まれるとその細胞でウイルスが増殖される。これはその細胞のDNAに間違った情報が提供されたと解釈できそうに思える。とすれば放射線の効果も同様な側面があるという氏の指摘ともどこかで共通の視点がありそうに思えた。2021.5.追記)