2 光がまっすぐ進むのは

投稿日 : 2021.06.18


光がまっすぐに進むか、曲がるかが、屈折率に関係しているらしいことは、「イカ」目玉で予想ができそうです。

実際、そうなのです。

「光はひどくせっかちで、できるだけ早く目的地へいける道を探す習性」があります。これを理論的に明らかにしたのが、17世紀にフランスにいたフェルマーという数学者でした。

今日この原理は「フェルマーの原理」と呼ばれていて、レンズなど光学機械の設計になくてはならない基本原理です。

この原理の考え方は難しくありません。

次の図の緑の曲線は、屈折率が場所によって連続的に違っている透明なもの(気体でも液体でも固体でもOKです)の中で、PからQへ光が進む道筋を適当に書いたものです。緑の曲線はPとQの最短コースですね。Fig1Fermat.bmp

フェルマーの原理は、「青の曲線を細かい同じ長さ(図ではdsと書いています)に切り刻んで、各断片の場所の屈折率nを掛け合わせた量を、PからQまで順番に足し合わせ、その総和をSとすると、光はSがもっとも小さな数になるように進むものだ」というものです。

すぐわかることは、もし屈折率がどこでも同じなら、Sが一番小さいのは、PからQまでの距離が最短になるところ、つまりその道筋は直線ですね。

これが「光は直進する」とよくいわれることの意味です。

しかし、現実の世界に目を向けると、短い距離ならまだしも、そんなものは特別に作らない限りなかなかありません。でも、どんなものでも、屈折率が場所によってどう変わっているかがだいだい分かる場合には、そこで光がどう進むかは、おおよそこの原理で予測できます。

この原理の少し詳しいことや、どのように予想するのかは、1ーaを参照ください。その結果として、屈折率nがどこでも同じ(n0)ところでは、次の図に示した関係式(方程式)から、光の道筋のある点の座標を(y、z)と表すと、yがzの変化に応じてどう変化するか、つまり光の道筋が求まります。fermat-equ0.jpgこれから光の進むz軸に対する傾きが変化しないことがわかり、道筋が直線であることが定量的に示されます。

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〇 フェルマー(Pierre de Fermat,1607- 1665)はフランスの数学者です。本職は法律家でした。この時代、日本では1600年に「関ケ原の戦い」があり、イタリアでは1633年にガリレオ・ガリレイが地動説を説いて宗教裁判にかけられました。地動説は「地球は太陽の周りをまわる」という今では常識になっている考えですが、その逆で「太陽や宇宙の方が地球を中心にしてまわる」という天動説を信じることになっていました。当時は教会の教えがすべて真理とされていましたから、それを否定されるのに脅威を感じてつぶしにかかったわけでしょう。科学によって得られる情報は、社会にとっていつも歓迎できることばかりではありませんから、こういうことはどの時代にもみられます。