2-a フェルマーの原理

投稿日 : 2021.06.18


フェルマーの原理を数学の記号を使って表すと、次のようになります。

equation(12).png

この原理によれば、光はこの式が成り立つような道筋に沿って進むということです。実際にこの式を計算する時には、数学の「変分法」という技を借ります。この解析学の方法の詳細は、このサイトの「Euler–Lagrange equation」など、解説書や教科書にあります。ここでは後に必要な事だけを簡単に紹介するにとどめます。

数学は、ある約束事の範囲で数が持っている規則性を論理的に明らかにする学問で、その約束の範囲では絶対に正しいことが証明されています。世の中で絶対に正しいことはそうありませんから、分からないことを明らかにする物理学では、非常に頼りになる武器になります。分からないことを明らかにしようとするときに、よくわからない道具を使っても役に立ちません。

変分法は、「ある数fが、例えばx、yの変化によって変化するのですが、xもyも変数zよって変化する(fは汎関数と呼ばれます)場合、zがzからzに変化した時、次の数式で表されるSが、最大または最小になる(極値がある)条件を求める方法です。ここでは後の話の便利のために、fにはx座標は含まれていないとして、この方法の指針だけを述べます。ýはyをzで一度微分した微係数です。dcd781a726c205dc778c9c58622f4ce7f364a131.png微分や積分の規則による考察から、Sが極値を持つための条件は、次の微分方程式の解であることが証明できます。

equation(3).pngつまり、Sが極値をもつ条件を探すには、この式(微分方程式)を解けばいいということです。この方程式はオイラーの方程式と呼ばれます。

右の図は簡単な場合を例に、変分法をフェルマーの原理に適応させるための準備を示したものです。fermat-equ1.jpg

まず、dsは光の進む道筋に沿った微小な距離ですが、ピタゴラスの公式を使ってdyとdzを使って書き直し変形すると、赤で示した部分を上で述べたfだとすれば、オイラーの方程式から、光の進む道筋が求まるという段取りです。

試しに屈折率がどこも同じ場合(nとします)について計算する手順を、次の図で示しました。632622d3924e54a9ca9eccaef69d5c7fb9f3219b.jpg赤字で示した不等式はýが十分小さいとしよういう意味で、平方根の中を1にしてしまって物理的に問題ないと考えます。(物理学では、このようにまず簡単なことからやってみて、現実に合わなければ改良していこうと考えます)

そうしてオイラーの方程式に当てはめると、ýがいつも同じであることが分かります。ýはz軸に対する光の道筋の傾きを表しますので、その傾きが同じということは、「屈折率が一定なら光はまっすぐに進む」ことで、このような方法で光が直進する現象を理論的に説明でき、この方法の有効性が確かめられます。

ここで、オイラーの方程式を一番下の赤で囲った形に整理しておくことは、あとでとても意味があることがわかります。