Eva Gevorgyan

投稿日 : 2021.10.21


今月2日から23日まで、ポーランド・ワルシャワで第18回ショパンピアノコンテストが開催されている。昨夜、優勝者や入賞者が決まり、その記念演奏会が今日から始まることになっている。

筆者は2段階目の審査での、Eva Gevorgyanという2004年生まれのロシアのピアニストの演奏を、たまたまYouTubeで見つけて、ひょっとしてこの人が優勝するのでは?と感じた。しかし、結局今回のコンテストでは入賞できなかった。

彼女の3段階目の演奏が10月17日にあり、その様子をYouTubeで聴いた。ショパンは1849年10月17日に没したので、ちょうど命日にあたる。

演奏曲目の中に、ピアノソナタ第2番 変ロ短調 作品35『葬送』があった。これを聴いて、予想が本当になるのではと思った。他のピアニストの演奏を聴かずに云々することはできないが、彼女の演奏は正直、筆者の心を震わせた。

この曲は、背景にポーランドの国民が置かれていた過酷な環境が映されているとの説があるそうだ。筆者が理論物理学者のナタンソンを調べる中で、確かにそうだろうとの印象を持っている。

一方、彼女は名前が示すように、アルメニア系のロシア人と推測できる。アルメニアは黒海とカスピ海に挟まれたトルコの隣国で、首都エレバンからは、ノアの洪水で有名なアララト山が望める筆者が一度訪れてみたいと思っていた国の一つでもある。しかし、アルメニア人は歴史的に繰り返し他民族の支配を受け、組織的な虐殺をうけたことも名高い。現在もオスマントルコを主に引き継ぐトルコとの政治的関係は複雑で、世界の不安定要因の一つといわれている。彼女の演奏もそのような民族の歴史がどこかに流れている弔いの鐘にも聞こえたと、勝手に思った。彼女が優勝するだろうと思った聴衆も多かったことは、会場の拍手や最終選考でのバックオーケストラ―の人々の表情からも、投稿されているコメントからも想像される。

一方、この時期の彼女のこの演奏は、次の景色を個人的に想いだすものでもあった。5429022309c14c5c24fb034a154fc009f905a5c6.jpg

近い将来、彼女の演奏が日本でも聴けるのではと期待している。