文化の日に

投稿日 : 2021.11.03


先月ワルシャワでのショパンコンクールで優勝した、カナダのBruce (Xiaoyu) Liuの演奏会が26日クラクフの西にある街、カトヴィツェのNOSPR concert hallで開かれた。

Koncert Laureata I Nagrody Bruce’a (Xiaoyu) Liu i Finalistki Evy Gevorgyan
Concert of the 1st Prize Laureate of the 18th Chopin Competition – Bruce (Xiaoyu) Liu and the Finalist – Eva Gevorgyan

26.10.2021
Wtorek / Tuesday
g. 19.30 / 7.30 PM

Sala koncertowa NOSPR w Katowicach / NOSPR Concert Hall in Katowice
https://nospr.org.pl/en/o-n

その演奏会の様子はYouTubeで見ることができる。
https://www.youtube.com/watch?v=0ie831U-sCU&ab_channel=ChopinInstitute

興味深いことに、このリサイタルの前半に、Eva Gevorgyanの演奏が行われた。彼女はコンクールでは最後までの残ったにもかからわず、入賞を逃した。この彼女が、ここで選ばれていることには、何か深い理由があるのかとも思った。とにかく観衆の反応はとても良かったと見える。Eva gevorgyan.jpg

今回のコンクールでは、どちらかというとポピュリズムが最終選考の場で優勢だったのではなかったのかなあと感じた。なにせクラシックの演奏家も、なかなかそれだけでは食べていけない時勢でもありそうで、そのような方向に業界が流れるのは致し方ないのかもしれない。しかし、彼女の演奏がプログラムに特に加えられたのは、その流れに対するささやかな警告だったのかもしれない。

もう一つ興味深いのは、このコンサートホールの建設に日本の音響建築企業の永田音響設計が関与していることである。この企業はNHK技研で培われた音響技術を基に故永田穂氏が起業したもので、国内外で多くのコンサートホールの建設にかかわってきた。

このホールもその一つで、2014年に完成したという。
https://www.nagata.co.jp/sakuhin/factsheets/NOSPR%20KATOWICE.pdf

このような企業が特殊技術を武器に世界で存在感を築いているのは、この国の行く末の一つの方向を示しているように思った。

これに限らず、そのような特色ある活動が、色々な企業活動、基礎科学、応用科学、芸術活動、その他の分野であるはずで、これを私たちがもっともっと身近に知るようにするのが、テレビなどマスコミの重要な仕事ではないかと、今日、文化の日に思った。その場限りの軽い番組を流すばかりに見えるのは寂しい。

文化は一見役に立たない遊び事、余裕のある人たちの道楽に思われているかも知れないが、実は創造性を生む源泉で、それが枯れると経済も政治も、国そのものの衰退が約束されるように思う。