18 おわりに

投稿日 : 2022.01.01


励起子の世界をのろのろ旅した雑感を綴ってきました。

この旅はちょうど高速道路に一般道から合流して多くの車に囲まれ、なんとか事故を起こさないように走っていると、間もなく彼らは前方へ消え失せます。しばらくのんびり走っていると、今度は後方から猛烈な速さで迫ってくる一団あり。そして、瞬く間に前方へ消えていく。そんな絶滅危惧種の運転するドライブ旅行のようなもので、この拙文はそんな旅の紀行です。

大学の研究室では、自分の好きな研究ばかりに集中するのが仕事ではなく、学生、大学院生や若い研究者の勉強や仕事を手伝うのが仕事です。ちょうどロケットの発射台の整備員みたいなものです。しかも、発射台の設備はあまり上等ではなく、うっかりすると、ロケットが乗るや崩落したりします。そこで、なんとか持ちこたえるようにトンカチで補強し続けることになります。

彼らは大体同世代の人達ですから、毎年、毎年同じ年頃の若者が入れ替わりながら、現れそして飛び去っていきます。ここは世代の移り変わりや気質の変化を定点観測できるとても不思議な職場です。また、こちらの年齢を忘れさせる環境といえます。しかし、こちらの歳も増えていきますから、定点観測といっても相対的な変化、つまり世代のずれの観測ともいえます。

それぞれの若者はそれぞれ違った環境で育ってきた人々ですから、それぞれ違った価値観、世界観、野心、目的を持っているので、それに満足に合わせるのはなかな難しいことです。まあ出会ったのが縁だと諦めてもらうほかありませんでした。ロケットの規格や、ネジもミリとかインチとか、尺貫法とかがありますし、暦もいろいろです。

ただ、この短い期間は若者があることだけに専念できる貴重な時間ですし、特に博士課程やそれと同等の年代の若者にとっては、才能や能力が最も発揮される記念すべき貴重な時間なので、発射台の整備屋としては、かなりプレッシャーを感じたものです。

発射台を無事飛び立った彼らの行き先は様々ですが、願わくば彼らがお互いにネガティブな競争をして無用の自滅事故を起こさないように、こっそりと闇夜に発射台を調整することも必要です。

発射したロケットがその後どのように飛行するかは予想できません。思いがけず宇宙の果てから弱い電波が届けば、無事らしいと安心します。

そんなことで、ここでは、そのような中で筆者が特に興味を持った問題についてだけを題材にしたわけですが、それ以外にもいろいろ興味深いデータをそのように縁のあった若者たちから見せてもらいました。

筆者が自分で興味を持って研究したいと思うテーマながら、自分よりきっと発展させてもらえるだろうと思えるものを、一応ロケットの燃料として最初に注入するのですが、ハイオクなのにレギュラーを入れてしまったり、液体燃料であるべきところを固体燃料だったりもします。でも時々に得られるデータはなかなか興味の尽きないものでした。ここで取り上げなかったことをご容赦ください。

なお、この拙文では邦人名はすべてローマ字で、称号などは省きました。