5 ヘビのように進む光

投稿日 : 2021.06.21


グリセリン入りの「ようかん」のような形のゼリーで、光をヘビのように進ませることができます。

次の図の左上の絵のように、平たい容器に仕切りを入れて、黄色の部分に前と同様なグリセリン入りのゼラチンを流し込み固めます。固まると仕切りを取り外し、白い部分に水を注ぎますが、上の面には届かないようにして適当な時間放置します。図のaは水を注ぐ前にレーザーポインターのビームを透したもので、ビームはまっすぐに進みます。bは斜めに通した時で、まっすぐ進んだビームは表面で反射してまた直進します。ところがcは水を注いで適当な時間経ってから、斜めにビームを入れた例で、このようにビームは滑らかな曲線を描いて進むのがわかります。oscillated beam 2.jpg

左上の絵のように、z軸とy軸を決めますと、この場合の屈折率は次のグラフの様になります。curved-refractive index.jpgこのような分布はz軸に沿ってどこでも同じで、金太郎あめのような状態になります。

この屈折率は、y~0の付近では、およそ次の放物線で表せます。equation(24).png

ここでn0は水を注ぐ前のゼラチンの屈折率です。

これを使って、前と同様な手順からオイラーの方程式を求めますと、次のようになります。05914f897b4ae2517bb44cf3a6d47f51e1683c05.pngここで、n0をmに、n0aをkと書いてみますと、次のようになります。

45a94993d86340f9bc3290e069d8ec51bb3180b4.png

これはバネに質量mの重りをぶら下げて、伸びたり縮んだりする振動を表す方程式で、yは伸びの量で、kはバネ定数というバネの強さを表す量です。右辺は復元力という力で、伸びや縮みを元に戻そうとするバネに現れる力です。この力は、膨大な数の原子や分子の集まりであるバネが伸びたときに、原子核の間隔が、平均として少し伸び、これが積み重なって生まれるもので、正しくは後に紹介する量子力学によって正体が分かるものです。

この力がこのように伸びや縮み(力学ではある基準からの変位と呼びます)に比例する性質は、フックの法則として知られ、バネ秤の原理です。秤に重すぎるものぶら下げるとバネが伸び切ってもとに戻らないので壊れてしまいます。つまり、この法則はyが短い時だけ有効です。6e040c49a2342335e7a9b691911bdaa1c398a0f5.jpgこの方程式の解の例を次の絵で示しました。バネの場合は横軸は時間、そして、上のゼリーの場合はzになります。上で示したレーザービームの道筋は、この絵のオレンジ色の矩形で囲んだ部分のようなものを見ていました。もっと細長いゼリーでは、ビームが波打って進むのもっとよく見えるはずです。3fc456a14b5d7b73b865770e99f2e4d42cd332c9.jpg

このゼリーのような長い棒はガラスの組成を制御して作れます。これは光ファイバーや円筒レンズとして利用されています。