20 レーザーって?

投稿日 : 2021.08.07


今日、レーザーはいたるところで使われている光源です。米粒より小さな半導体レーザーから、巨大な装置まで、用途も色々です。ライブの会場を盛り上げるあの色は特別です。

でも、どうしてあんな光が出るのでしょう?

レーザーは、英語の頭文字をならべた略語です。
LESER: Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation
『誘導放出による光増幅』の意味です。

誘導放出? 光増幅? でも、フォトンは「のっぺらぼう」でしたね。そして、次の関係式を思い出していただくと、レーザーの原理はわかます。9df567bdee5c4d3617b43a413596684efea9faea.pngここで949b327dc785d8686a6610efe5be580e81de1836.pngはある空間(物質の中)でフォトンが一個増える確率、4090f5d36d0627cc2c59d513b75cf2797a661c4d.pngはフォトンが「のっぺらぼう」でないとした時のそこでフォトンが一個増える確率でした。この式は「フォトンが区別のできない粒子だから、その空間にフォトンがn個あれば、フォトンが一個増える確率がnに比例して大きくなる」という性質がフォトンにはあることを示していました。この現象は誘導放出と呼ばれます。そしてそのためにフォトンの数、つまり光の強さが増幅されるので、電気回路による増幅と同じ言葉を使って光増幅と呼ばれます。

多くのレーザーは次のような構造をしています。二枚の鏡を向かい合わせにおいて、その間に何か発光をする物質(気体でも液体でも固体でもOKです)を置きます。次にこの物質に、外からその物質が発光するように仕組みます。すると、物質は四方八方へ発光するのですが、鏡に向かった光は反射され、後戻りします。そして、二枚の鏡の間を行き来します。一方、外からは絶えずその物質を光らせるようにしますので、誘導放出のために、行き来する光の強さ(フォトンの数)に比例する効率で物質が同じフォトンを放出する現象が起きます。つまり、それ以外のフォトンは、鏡から漏れたり吸収されて無くなってしまうために、そのフォトンによる誘導放出の効率はほとんどなくなるからです。そうして2枚の鏡の間の空間で爆発的にフォトンの数が増えた(強くなった)光の一部を、一方の鏡から少し取り出して使うのがレーザーです。実際のレーザーでは、レーザーとなる光の波長を決めたり、最強の光になるようにしたりするために、色々な工夫がされていますが、基本的にはこのような仕掛けでレーザーの光が生まれます。

次の写真はレーザーに使われたルビーの円柱の棒の切り口から、緑色の光を当てると円柱全体が赤く光る様子です。rubylaser.jpgこの円柱を、向かい合わせに置いた二枚の鏡の間において、外部から(実際は円柱の側面から)赤い光を光らせる別の強い光を当てて、この赤い光を増幅させるとレーザー光が生まれます。

ルビーの円柱の中心軸をx軸として、左の端を原点としたとき、x軸に沿って、xとx+dxの間にあるフォトンの数をdnとすると、フォトンの数が増える割合は次の微分方程式で表されます。

equation(203).png ここでaとbはプラスの定数で、aはnの長さ当たりの増える割合を表わし、bはnの数が減る割合をあらわします。この定数は物質の種類や光らせる仕掛けの様子、鏡の反射率、鏡の間隔などによって変わり、大抵の場合はbの方がaより大きくなって、増幅は起こりません。また、aがbより大きすぎると、増幅が大きすぎて、場合によっては物質が壊れたりします。したがって、aがほどよくbより大きくなるように工夫されています。この方程式にしたがう自然現象はレーザーだけでなくたくさんありますので、この方程式の応用例についてはあとの節でまとめて考えます。

実際のルビーレーザーでは、赤い光を光らせるために周囲から当てる光がパルスなので、上のような考えはパルスが当たっている短い時間の間の話しです。気体のレーザーや半導体を使うレーザーでは、長い時間このような状況を作ることができます。そしてaがbに等しくできれば、非常に強さの安定したレーザー光が生まれます。