28-a 補足

投稿日 : 2021.09.06


波動関数の規格化と直交性についてのメモ

水素原子の電子の運動についてのシュレーディンガー方程式を解く場合、波動方程式の解がもつ2つの重要な性質を使います。それらは次の数式で表現できます。

一つは、equation(272).pngです。これは積分した値が時間的に変化しないこと、つまり、equation(273).pngを意味します。これはx<xとx>xの範囲では電子が観測されることはないという前提を表します。

もう一つは、equation(279).pngです。これは、外力が加わらない限り、水素原子の中で違ったエネルギーを持つ電子の運動は互いに干渉しない、つまり独立して運動し続けることを表します。

それぞれの関係式の導き方は以下の通りです。

最初の積分について:出発点は時間を含んだシュレーディンガー方程式、equation(252).pngです。次のようにψ*とψを両辺に掛けて、それぞれの辺を差し引いてVの関係する部分を消去します。ここでは変則的な表現をします。

equation(259).png、 equation(260).png

左辺の結果は、equation(261).png

右辺の結果は、equation(262).pngと整理できます。次に、技巧として次の式を計算します。equation(263).png、 equation(264).png これらを差し引くと、右辺が整理できて、全体をまとめると、equation(266).pngとなります。

右辺の積分は、括弧の中のx=xでの値から、xでの値を引いたものですが、この場所はxの変化する境界ですから、ψはゼロとすべきなので、右辺はゼロです。(一般の波動の場合の例では、楽器の弦による音は端でゼロ、管の中の空気の音では、腹で変化がゼロです)これから、153b8f10d9a1bbdcdfce93d93856912da39c7c3b.pngが得られます。

なお、三次元の場合は、equation(268).pngですので、右辺の体積積分は、ガウスの定理によって(この定理を一般的に初めて証明したのは、オストログラツキー(1801-1862)です)、Ψが意味を持つと決めた、体積Vを取り囲む領域の表面だけでの積分(表面積分)に変換できますので、表面上ではψはどこでもゼロという約束ですから、左辺がゼロになります。

後の方の関係式は、次のように導けます。

出発点は時間に依存しないシュレーディンガー方程式、equation(274).pngです。

上の方法と似た計算を次のようにします。equation(276).pngequation(275).png

両辺をそれぞれ差し引くと、equation(278).pngと整理できますので、上の場合と同様な式の変形から、右辺がゼロとなって、equation(277).pngとなります。EとEは違った値と考えてきましたので、カッコの中はゼロではなく、積分がゼロになります。したがって、60171482e0b462d217a3c4707aaf8540b2d34dc8.pngが得られます。