28-a 補足
投稿日 : 2021.09.06
波動関数の規格化と直交性についてのメモ
水素原子の電子の運動についてのシュレーディンガー方程式を解く場合、波動方程式の解がもつ2つの重要な性質を使います。それらは次の数式で表現できます。
一つは、です。これは積分した値が時間的に変化しないこと、つまり、を意味します。これはx<x1とx>x2の範囲では電子が観測されることはないという前提を表します。
もう一つは、です。これは、外力が加わらない限り、水素原子の中で違ったエネルギーを持つ電子の運動は互いに干渉しない、つまり独立して運動し続けることを表します。
それぞれの関係式の導き方は以下の通りです。
最初の積分について:出発点は時間を含んだシュレーディンガー方程式、です。次のようにψ*とψを両辺に掛けて、それぞれの辺を差し引いてVの関係する部分を消去します。ここでは変則的な表現をします。
、
左辺の結果は、、
右辺の結果は、と整理できます。次に、技巧として次の式を計算します。、 これらを差し引くと、右辺が整理できて、全体をまとめると、となります。
右辺の積分は、括弧の中のx=x2での値から、x1での値を引いたものですが、この場所はxの変化する境界ですから、ψはゼロとすべきなので、右辺はゼロです。(一般の波動の場合の例では、楽器の弦による音は端でゼロ、管の中の空気の音では、腹で変化がゼロです)これから、が得られます。
なお、三次元の場合は、ですので、右辺の体積積分は、ガウスの定理によって(この定理を一般的に初めて証明したのは、オストログラツキー(1801-1862)です)、Ψが意味を持つと決めた、体積Vを取り囲む領域の表面だけでの積分(表面積分)に変換できますので、表面上ではψはどこでもゼロという約束ですから、左辺がゼロになります。
後の方の関係式は、次のように導けます。
出発点は時間に依存しないシュレーディンガー方程式、です。
上の方法と似た計算を次のようにします。、
両辺をそれぞれ差し引くと、と整理できますので、上の場合と同様な式の変形から、右辺がゼロとなって、となります。E1とE2は違った値と考えてきましたので、カッコの中はゼロではなく、積分がゼロになります。したがって、が得られます。
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