自然の流れを止められるか?

投稿日 : 2022.09.24


あるテレビのニュース番組でロシアの「母の会」という団体の代表へのインタビューが流れました。そこで代表は「政治的な見解を述べるのは危険だ。今回の話は天災だ」という趣旨を述べていました。もちろん注意深い発言で本心ではありえません。

「今回の話」とはロシアのプーチンの「部分動員」を指します。

9月23日 Rusko čeká na svůj Vietnam
(ロシアは(アメリカの経験した)ベトナムを待っている)


ロシア連邦での部分的な動員を発表したことで、ウクライナでの戦争に反対する住民による最初の大規模な抗議活動が始まった。これまでのプーチンの政策を支持しても、戦場で死にたくないと思う人が多いことがわかった。今のところ、自分たちが戦わなければならないような危機的状況にはなっていない。

部分的な動員は、紛争の本質を完全に変えてしまった。

*ソ連・ロシア社会には、ソ連、ひいてはロシアは戦争をしていない、という物語が流れていた。戦争は、自国が直接攻撃され、敵軍が自国の領土に侵入したときにのみ行う。しかし、動員は、クレムリンのプロパガンダによって大衆化された人々にとって、たとえ公式に宣言されていなくとも、戦争を意味する。

現役の兵士や他の軍隊のメンバーが、急遽自らを認めた分離主義者の擬似国家組織を助けに行くことと、他の国家の領域で行われる作戦に予備軍を動員することは別のことである。
占領地での住民投票実施の動きが加速しているのは、この状況を変えようとする意図があるようだ。これらの飛び地が母なるロシアへの参加を決め、モスクワがそれを拒否しなければ、戦闘は突然ロシア連邦の領土で行われることになる。しかし、ロシア人が、あるいは少なくともその一部の人々が自分たちの首を賭けているときに、この曲解した手段を受け入れるほど操られているかどうかは疑問である。

*(現在ロシアで起きている)デモは、ロシアが独自のベトナムに直面している可能性を示唆している。

*アフガニスタンは通常、ソビエト・ベトナムと呼ばれる。戦争が長引き、ソ連が勝てなかったため、国家間の摩擦や経済問題とともに、最終的にはソ連邦の崩壊に至ったからだ。

アメリカがベトナムで負けたのは、ソビエトがヒンズークシュの下で負けたように、自軍の弱さや複雑な地形が原因ではなく、アメリカ人が理解していない国の戦争への反発が強まったためである。

彼らは、共産主義封じ込め政策のもと、腐敗した南ベトナム政権を維持するために、地球の裏側で戦死しなければならない理由がわからなかった。南ベトナムの崩壊が、米国を脅かすとは感じなかったからである。

そして、発ガン性のある猛毒の枯葉剤が投入されていることが知られ、ベトナムで一部のアメリカ兵が行った残虐行為が、ほとんどの戦争で行われているのと同様、ウクライナよりもさらに大規模に見られることが公表されると、国民は戦争に反対したのである。そこでリチャード・ニクソンは、停戦協定に合意し、事実上、南ベトナムを犠牲にするしかなかった。

アメリカはベトナム症候群から立ち直るのに、軍事的、政治的、社会的に長い時間を要した。共産主義が崩壊して、初めてそこから脱却した。しかし、非民主的なロシアの場合、そのような抗議行動は、民主主義の自己規制機構を持たない政権そのものを脅かすことになりかねない。もちろん、デモはすぐに沈静化するか、弾圧されるかもしれないが、紛争が長期化し、プーチン大統領の人気が低下し始めると、再び起こるだろう。

ウクライナに侵攻しないことで、彼は自分自身を追い詰めた。

「ウクライナに侵攻しないことで」、原文では、” Nepředloženým napadením Ukrajiny se sám lapil do pasti.”とありますが、ミスプリントでしょうか?筆者は「侵攻したから」の方が分かりやすいと思いました。

このままでは徴兵令となるのは「自然の流れ」で、天災のようなことなのでしょうか? 
かつての強制収容所や強制労働の拠点だったというマガダンで集めあめられた人々が輸送機に乗り込む写真がネットにみられます。もしそれが本当に今回の命令によって起きている今の写真なら、広いロシアの各地で同様な光景があるのでしょう。

太平洋戦争でも、この天災は防ぐことはできませんでした。問題がわが身に降りかかってからではもう逃げられなくなります。太平洋戦争では原爆がドイツではなく、広島・長崎に投下されました。もし、今回核兵器が使われるとすると、ウクライナやヨーロッパで使われるのでしょうか? いろいろな思惑が交錯しているような東アジアの人気のない所へという選択もあるのではと懸念されます。あまり潜在的に意識されない、ここなら報復されても、まあ欧米は大丈夫と。実験場として、さて。「まさか」が起きるのが戦争ですから。