火のないところに煙は立たない

投稿日 : 2023.06.26


徳川家康の一代記、『武徳編年集成』を書いた、江戸中期の歴史家木村高敦は、天文12年(1543)8月25日の条で、

『島津修理太夫義久の領地の大隈に属している種子島へ、南蛮船が貿易のために入港した。彼らは戦いの勝敗を早く決められそうな火砲というものを携えてきた』

と記しています。

実際この時伝来した鉄砲は瞬く間に全国に普及して、戦闘の状況を大きく変化させました。

『戦いの勝敗を早く決められそうな火砲」という考え方は、原子爆弾を日本に投下させる意義として、『太平洋戦争を早期に終結させた』と欧米ではポジティブに理解されているようです。

現在進行中のウクライナの戦争も、長期化の様相を呈している一方で、数日前にはロシア内部のクーデター騒ぎも起きました。

そのような戦況でロシアのある保守的な意見の一つとして、

『元プーチン大統領顧問「核攻撃は世界を大惨事から救うだろう」彼はポズナンを指さした』2023/06/14 20:13、カロリナ・ミアネッカという記事もあり、その中で

『ロシアは核兵器による攻撃を実行することで人類を地球規模の大惨事から救うことができる」とウラジーミル・プーチン大統領の元顧問で政治学者でモスクワの大学の教授であるセルゲイ・カラガノフ氏は言う。同氏は、ヨーロッパのどこか、「例えば」ポズナンで先制攻撃を行うべきだと示唆している。「核兵器の出現は全能者の介入の結果である」と彼は主張する』とあります。

どうしてポズナンなのかは、筆者にはよくわかりませんが、このポーランドの古都で、1956年に反ソ暴動が起きたことを根に持っている人なのでしょうか?
そういえば、広島や長崎ではなく、まずは京都へという案もあったと聞きます。

別のポーランドから少々気になる記事がありました。

ジャン・マトガによる、6月25日の『ザポリージャの(原子力)発電所を爆破する計画は承認された」という記事です。

概要は『ウクライナ軍事情報長官(HUR)は、ロシアがザポリージャ原子力発電所の原子炉冷却システムを爆破する準備を完了したと主張した。キリロ・ブダノフ氏は英国週刊誌「ニュー・ステイツマン」のインタビューで「計画は策定され、承認された」と述べ、状況がこれほど深刻になったことはないと付け加えた」とあります。

どちらも情報戦の一環で、ガサネタだとの見方が多いのですが、その一方で、以前からドニエプル川のダムをロシア軍が破壊するだろうとの話はありました。しかし、まさかそこまではしないだろうとの予想は裏切られ、本当に爆破され、実際ロシアがウクライナの攻撃を妨害するためだったことが明らかになったそうです。

「核兵器を使うぞ」という脅しは何度も聞こえますが、原子力発電所の冷却システムを破壊させることは、核兵器を使うより容易です。核兵器は実験が必要ですし、扱いにも注意がいります。しかし、発電所の方は、チェルノブイリ原発や東電福島第一原子力発電所で図らずも、実質的な物理的社会的実験が費用ゼロでなされています。

『早く何とかしたい』が「こんな形でやれるじゃないの」と、誰かが思い込まないことを願うばかりです。しかも「全能者」が登場しては、どうなるのでしょう。