9.電気と生体
投稿日 : 2009.09.03
生物電気と言うと多くの人は電気魚の様なものを連想する。この電気力は数百Voltに達するのであるが起電力は何であろうか。それは筋肉の収縮によって起こった細胞のひずみによりピエゾ電気(piezoelectricity)が発生するものと解せられている。
生体の電気を端的に知ることが出来るのは心電図(electrocordiogram)であるが、そのT波は人体が立位をとると直ぐに低くなる。立位の場合は重力によって血液が下腿に行くので、これを押し上げるためにsympathetic networkが作動し、これが低カリ血圧(hypopotassemia)を招来する12)。このためにT波の変化が起る。
しかしながら現代の医学は「何故重力がsympatheticを刺戟するか」の説明に乏しい。「蛋白にもピエゾ電気が発生している」との仮説が設けられればこの問題も一応説明がつくであろう。
この仮説の証明に早大教授H.K.博士は超音波を各生物構成分質に与えてpiezoelectricityを観察した。骨や植物の一部では計測出来るけれども他の液状蛋白には認められなかった。これは発生しているけれども直に放電していると考えられる。蛋白の電気伝導率の高さから言っても当然のことであろう。蛋白はまたこの様な高電気伝導の特性をもつ必要があると推定される。
最近米国で触覚の機構がpiezoelectricityによるものである事が発表されたし、骨が重力負荷にも不拘曲らないのはpiezoelectricityの発生によって曲った外側のCa等が解けて内側の負極と考えられる骨に沈着してゆくからであろうとされている13)。これは前述の仮説の証明にもなるであろう。
生物というものをこの様に考えて眺めると大変興味がある。例えば歯が発達してくるのを助けるのは咬筋による電気現象の結果であろう。乳歯が成人歯の発達と共に歯根よりとけさっていくのも同様な解釈をすると了解しやすい。
生物におけるピエゾ電気の存在はその量もさることながらその方向性も重要と思われる。重力が一定方向に働いている事は生物コンパスの一種と考えることができよう。