10.赤血球の利用

投稿日 : 2009.09.03


赤血球が各物質を吸着する可能性のある事は前述した。これが荷電体である事も知られている。赤血球が溶血(hemolysis)するとその吸着性は失われ光の吸収率は大幅に減少する。光電比色計で溶血の有無はすぐ分かる14)。私は従来erytinochromatographyと言う仮称を設け赤血球に各種物質を吸着さしてこの物理的特性変化を計測する事も考えていた。前述の球形化の度合い及び時間は光電比色計でも容易に測定出来る。最近肺癌の診断に赤血球の電気泳動(electrophoresis)速度を計測している報告がある。これは洗浄した赤血球を癌患者の血清中にincuvateしてその泳動速度の変化より診断するのである15)。確率は極めて高いと言う。

Debyeのshielding lengthは数十オングストローム以内と言われているが、赤血球の凸凹やshieb或は小さな穴の存在を考えると相当幅の吸着性を持っているはずである。赤血球は核のないので生物が作った「細胞のsimilater」とも言えるもので広い利用性をもっている。工学方面においてもその直径を自由にcontrol出来る均一性の微粒子は求め難いが、我々の身近にこの様な物質が存在している事は興味深い。

(筆者注:ここに手書きのメモが付け加えられている:『48年エチオピアでの研究は今迄すてられていた赤血球を利用して抗原をincuveteし、これに0.6、2.5、5%のNaClを加えて希釈して抗原を加えない赤血球の場合と比色比較することによって新しい抗原抗体反応の道を拓いた』)