11.生体の微小構造
投稿日 : 2009.09.03
生物の本質は何か。第一に細胞膜の存在である。この研究には微小な穴(molecular shieves)と液晶と言うものの物理化学物性の研究がその基礎となるであろう。液晶は擬結晶とも言えるものであって生体はこの様な物質で相互に結合していると考えられる。
かつて生物の体内にイオン物質を荷電により導入してみた11)。イオンの進む速度よりイオンを運び去る循環系の速度の方が遥かに早く「生体とは循環系以外では仲々他物質を深部まで浸透させ難い程緊密に結合した物体」との感を深くした。しかし、皮膚面を破壊し去る如き電圧例えば20~30Voltを与えると数時間後には皮膚及びその皮下組織の壊死が電極付近におこり、イオンはそれより直線的に対極(陽極或は陰極)に向かって進んでゆく。これは強力通電の場合血管閉塞が起りそのために循環系の力が弱まったためであろう。
この様に一面は固定化した面をもちながら他面は極めて流動的な面をもち生物はやっは矢張複雑と言うより他はない。晶質と言うものはその物理特性においてenergy lossは少ない。材質の均一性と結合性のためであろう。この故に他物質にみられぬenergyの集中化が出来る点は注目してよいと思う。
H.K.、K.Y.両氏はμ単位の穴をガラス試験管に穿って、これを境に各種濃度のNaCl液を入れ、かつこの両極間に20~30Voltの電圧をかけている。これは細胞膜のsimilaterを意図したものである。実験結果は神経細胞に似たpulse currentをえている。
より高電圧をかけると異種液界面には青白の光が発生する事がある。生物の発光が青白い事を考えると興味深い。これは一種の液体プラズマであってこの様な観点から生物を眺めると甚だ面白い。μ単位の穴のために両液は混合しがたくそのunbalanceを保っておくことが出来る。穴は逆自乗的にその吸着力を増加するのでμ単位以下のÅ単位の穴の場合は予測すら出来ない。
極微の世界の物質はその晶質性が鮮明となるために我々の常識外の事が起る可能性を秘めている。例えば軽度のまさつで数百度の熱や数千度の荷電が局所的に発生する。ここに生物が細胞と言う数μの規格品とも言うべきものからなり、これをエネルギー開発の根拠としている秘密があるのではなかろうか。
電気的に処理された炭素結晶のつらなりは金属線の数十倍の強度をもっている。生体が時として示す強靭さはこのような原理に基づくものではあるまいか。
いずれにしてもtinny holeと晶質の研究は今後の課題であろう。レーザー光線がエネルギーを蓄積しておいてから一度に放射され結果的には強力なエネルギーの集中を行っているのは材質が晶質使用と言う点からみて大変興味がある。(筆者注:著者はルビー・レーザーを念頭に置いたと推測できるが、発振に寄与するCr+3に対する結晶場の効果を指していると思われる)生物もその様な吊り上げ方式を採用しておりその構成も液晶である点が面白い。
最近Du Pont Co.(デュポン社)が海水から真水をとる研究として開発したものは、逆浸透圧(anti-osmotic pressure)を利用してtinny holeから真水をとる生物学的方法ときいている。海水に住む魚が海水の「塩からさ」をもたないのは細胞膜のイオンポンプであろうし、そのエネルギー源は前述のA.T.P.とされている。生物学的ポンプから無限の真水をとり、また鉱物資源をえ、砂漠を沃地と化す可能性を秘めている。
生物が液晶であることはまた次の点でも特異面をもつ。我々は生体における刺戟伝導が金属内のelectronによる電気伝導と異なる事を知っている。恐らく緊密に結合した液晶を構成するイオンの「なだれ現象」によるものであろう。神経細胞はこの故に金属の場合と異なって周囲に感応作用を及ぼさない。
また、生物が示す発光現象が主として青白い光であり、赤色光が少ないのは興味ある事柄で、前述のsimilationの実験のように、かなり高い周波数でしかも一定した発振現象を推定させる。即ち生物の細胞膜のエネルギー取り出しの規格構造は案外相互に共通性があるのではないかと思われる。以上、いささか冗長のきらいはあるが後章の説明をかねて生物の微細構造に関する著者の見解をのべた。