16 ブラックホールって、どんな穴?

投稿日 : 2021.07.23


ブラックホールはどなたも一度はどこかで耳にされたことのある天体ではないでしょうか?

この宇宙に浮かぶ「穴」には何もかもが飲み込まれ、光さえ一度飲み込まれると絶対に出られない、地獄の入口のような口を開けて光や星を貪り食っている怪物のイメージでしょうか?

でも、次の絵でみると、そんなに不思議でもないことが想像できます。black hole.jpgせいうち君が空から落ちています。地球へ落ちてくると、しりもちをつきますね。左側の絵です。(イラスト:ぷにつく

ところが、地球の重力がめちゃめちゃ強くて(質量がやたら大きくて)、半径がめちゃめちゃ小さい赤い丸のような星だったらどうなるでしょう。せいうち君はどんどん落ちて速さもどんどん速くなりますが、まだ地面には着きません。(この絵のせいうち君の姿は本当はこうはなりません。これまでこの拙文を読まれた方は気付かれると思います)

やがて落下する速さが光速にcになってしまったとします。せいうち君はやった!と遠くにいる友達にスマホで伝えようとしました。でも電波の速さはcですから、ぜんぜん電波は進めないので、連絡ができません。

その後、せいうち君は重力源(特異点と呼ばれます)へ向かって光速のままどんどん落ちていくのですが、こうなるともう外部とは絶対に連絡がつかない(光が出られない)ので、どうなっているか外からは分からなくなります。

ですから、そこからは光が出てこないので黒くみえるだろう、というのでブラックだというわけです。

つまり、重力源の中心から測って、落下物の落ちる速度がcとなる場所が半径となる球の内部の領域がブラックホールです。別に口を開けた怪物がいるわけではありません。

この半径はシュワルツシルド半径とよばれます。この領域の境界は、事象の地平線(Event Horizon)と呼ばれます。海の水平線の向こうにあるものは見えないので、それに似ているのでそう呼ばれるわけです。

次の写真はブラックホールが実際に見えたという観測結果です。e8946aedff0eb7e5c3106bcabe392981e2a832a4.jpgこのような色をしているのではなく、見やすいように色を付けたものですが、黒い丸いものが見えます。これがブラックホールの外観です。これは地球から見たときの姿ですが、これを別の星から見ればどう見えるのでしょうね。

このブラックホールは、おとめ座のM87という銀河にあり、太陽の質量の65億倍も大きな質量を持った物体が中心にあるとされています。

このように、事象の地平線に達した物体から出た光は私たちに届かなくなります。その理由はこちらを参考にして考えてください。

つまりブラックホールの内部で何が起きていても、外部からは分からないわけです。

しかし、ホーキング(Stephen William Hawking、1942-2018)によれば、それでも、ブラックホールの内部の情報も外部から間接的にわかるかもしれない現象が起きるそうです。それは事象の水平線の付近の空間では、物質と反物質の対やフォトンの対が生まれることがあって、外側で発生した片割れが遠くから見えるということです。つまりブラックホールは必ずしも黒いとはいえない(ホーキンス放射)そうです。また、この効果で、ブラックホールの内部のエネルギーが短い時間で減ってしまい、ブラックホールが消えてしまうそうです。

彼の論文によれば、そのとき生じる爆発は1メガトンの水素爆弾の百万倍ほどの威力なので、天体の爆発としてはたいしたものではない・と書かれています。でも、そんな爆発が太陽系の傍で起きては困りますが、どのみち離れていそうですから、それが地球に届くには相当時間がかかるでしょ。ですからその頃のことを心配しても仕方がないですね。

すこし話が大きすぎる方向へ行ってしまいました。今後はもっと私たちに身近なミクロの世界へ話を移します。